芝居を観てきた。
男芝居は面白い作品が多いが、作り手側がその男臭さに酔いしれてしまうと目も当てられない。
「男同士ってサイコーだよな!」とがっちりスクラムを組むその腕の隙間から、その様をまわりの女子がどう見ているのかをこっそり伺っているような、そんな中学男子みたいなニキビ芝居にお金を払えるほど、アラフォー主婦のお財布に余裕はないのよ。
と思うことがたまにあるが、それはこのパラドックス定数の話ではない。
女性であることが信じられない(夫談)ほど男性の心理を巧みに紡ぎだす作家と、意識の高い俳優陣からは、自己陶酔などというものは毛ほども感じられない。陶酔するのはあくまで観客である。
正解だ、と思う。
涼しい顔をして、時折小ネタなどはさみながら開演前のアナウンスをする女性が作演出のその人だと知った時、たいそう驚いた。
死ぬほどの生みの苦しみとか、思い入れとか思い込みとか、そういったものをすっぱりどこかに置いてきて
「どうぞご笑覧下さい」みたいなテンションで平然と客前に立っていた。ように見えた。
ああ、これまた正解だ、と思った。
芸術において正解はない、ということはなく、正解がいっぱいあるだけだ。なんてことはよく言われるが、
この集団の導き出す正解は、かなり難易度の高い方のそれだと思う。
「赤い炎より青い炎の方が温度は高いんです」
と、昔理科の先生が言っていた。
なんでかは忘れた。ただ、文系の脳にはそのフレーズだけがずっと残っている。
顔を炙られてもその瞬間は火傷に気づかず、すべてが終わってから、火ぶくれした顔を見て愕然とするみたいな、青い炎のような作品であった。
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